伊達VR その1

今年はレース関係の案件が無い(=公開可能な案件が無い)ので生存報告がてら引き続き変なモノをつくった記録を載せていきます。

さて、タイトルにあるように伊達VRというものをつくりました。
これが何かというと名前の通りなのですが、「伊達眼鏡」のように必然性の無いVRみたいに見える何か、です。

簡単に作り方を追ってみましょう。
     

1.3D測定をする

3Dプリンタでモノをつくるには3Dデータが必要です。
実世界に出力する3Dデータをつくるには寸法が必要です。
寸法は単純なものなら定規などで測ればいいですが、顔に装着する物なのでゲージで断面を取ったり3D測定で表面の形状を撮る事が必要になります。
幸い2020年現在ではiPhoneに備えられたFace IDのセンサーを使って簡易な測定をするアプリがあるのでそれで点群を取り、普段使用している3Dソフトに取り込みました。(ただしサイズが狂っているので拡大縮小の調整は必要です。)

2.3Dデータをつくる

通常の仕事であれば沢山の可能性の中から候補を選ぶためにスケッチを描いて検討するのですが、今回は自分のためのモノなので作りたいものが明確に頭の中にありました。それを鮮度が高いうちに脳内からPCの中へと移動させます。

ラフな面を空中に置きながら微調整を繰り返し、最適な機能と見た目を選び取っていった

今回の伊達VRは文字通り「伊達」であることが重要です。つまり、外部からは装着者が仮想世界に没入しているように見えながら、本人は変わらずリアルな環境を見ることができる必要があります。
色々な手はありますが、今回は潜望鏡の仕組みを使いました。

潜望鏡の仕組みを使う事で目と周囲を覆いながら視界を確保した

これによって装着者は2つの視界を得ます。1つはミラーを経由した正面の視界、もう一つが直視可能な斜め下前方の視界です。
ミラー経由の視界は対面した人物を見ることに効果的です。
視界を持たないように見えるのに話している相手の方に顔を向ける事ができます。
斜め下前方の視界は机上の作業やスマホを見る等の動作に有効です。特に細かい字などを読み上げるにも直視の方がコンディションが安定しやすい利点があります。

視界の存在を隠す縦スリット
     

この二つの視界を確保した上で、その存在を隠しました。
これも色々と手法はありますが、今回は奥行きのあるスリットを使いました。
スリットは角度を振ると奥まで見えにくくなります。横から見えにくい縦スリットにし、ある程度目を細かく区切っていくことで一層奥まで見えにくくしてあります。
厳密には覗き込まれるとミラー越しに目が合うのですが、内側を可能な限り暗くしてやることで「カーテンの隙間から見た暗い部屋」のように見えにくくすることができました。

こうしてカタチをつくっていきましたが、頭部への装着はメガネ型としました。
通常のVRゴーグルだと伸縮性のあるバンドが使われることが多いですが、伊達VRは内機が不要なのでそれほど重くならない事と色々な人に被ってもらう際に着け外しが楽な方が良いだろうと考えメガネ型にしました。

一通りできたら、出力を考えた部品構成に編集して一旦データ完、次は出力です。

自分を測定したカラーの点群に装着した状態。メガネのつるは変形して拡がるのでデータ上は側頭部にめり込んでいます。。

くろかわ